
EMC規格の一覧と各業界の要求事項
電子機器が市場に投入される際には、各国および業界ごとに定められたEMC(電磁両立性)規格に適合する必要があります。本記事では、主要なEMC規格の概要と各業界における要求事項について詳しく解説します。
EMC規格とは?
EMC規格は、電子機器が不要な電磁ノイズを発生させず、また外部のノイズによる影響を受けにくくするために策定されています。これにより、通信機器、医療機器、産業機器などが安定して動作し、安全性が確保されます。
EMC試験をクリアすることは、製品の市場投入において必須であり、適合しない製品は販売できないだけでなく、機器同士の誤作動や通信障害などを引き起こす可能性があります。
EMC規格の適用範囲
EMC規格は、家庭用電化製品から産業用機器、自動車、軍事機器に至るまで幅広い製品に適用されます。例えば、家電製品ではテレビや電子レンジなどが対象となり、これらが放射するノイズが他の機器に干渉しないように設計されています。一方で、自動車業界では、車載電子機器がエンジンや電動モーターからのノイズの影響を受けず、適切に機能することが求められます。また、医療機器では、患者の安全性を確保するため、極めて厳格なノイズ管理が必要です。各分野で求められる適合基準が異なるため、製品設計の段階から適切な規格を考慮することが重要となります。
主要なEMC規格一覧
EMC規格には、国際的に広く採用されているものから、各国・各業界に特化したものまで多岐にわたります。本章では、主要なEMC規格の概要と業界ごとの適用基準について詳しく解説します。
国際的なEMC規格
電子機器が国際市場に出荷される際には、それぞれの地域で定められたEMC規格に準拠する必要があります。国際的に広く採用されている規格の特徴を理解し、製品開発の初期段階から適切な対策を講じることが求められます。 EMC規格は、各国・各地域で異なる基準が設けられていますが、主に以下の規格が国際的に広く適用されています。
規格名 | 概要 | 主な適用分野 |
---|---|---|
CISPR(Comité International Spécial des Perturbations Radioélectriques) | 国際無線障害特別委員会が策定する無線周波数干渉に関する規格。 | 家電、産業機器、自動車 |
IEC(International Electrotechnical Commission) | 国際電気標準会議が定める電気電子機器のEMC基準。 | 医療機器、産業機器 |
FCC(Federal Communications Commission) | アメリカ連邦通信委員会が規定するEMC規格。 | 通信機器、IT機器 |
VCCI(Voluntary Control Council for Interference) | 日本国内の民生用電子機器向けのEMC規格。 | 家電、パソコン、オフィス機器 |
MIL規格(Military Standards) | アメリカ国防総省が定める軍用機器向けの厳格なEMC基準。 | 軍事・防衛関連機器 |
業界ごとのEMC規格
各業界では、それぞれの用途や環境に応じたEMC規格が求められます。例えば、自動車業界では電子制御ユニット(ECU)や電動パワートレインが他の電子機器に干渉しないよう厳格なノイズ制御が必要です。一方、医療機器では病院内での無線通信機器との干渉を防ぐことが特に重要とされています。産業機器では、工場などのノイズ環境下でも安定した動作を維持することが求められ、通信機器では適切な電磁適合性を確保することで通信の安定性を向上させることが必要となります。 各業界では、それぞれの用途や環境に応じて異なるEMC規格が適用されます。
自動車業界では、電子制御ユニット(ECU)や電動パワートレインが他の電子機器に干渉しないよう厳格なノイズ制御が求められます。そのため、ISO 7637(車載電子機器の耐ノイズ性)やISO 11452(電磁適合性試験)といった規格が採用されており、車両全体のEMC適合性を高めることが重要視されています。
医療機器の分野では、患者の安全を確保するために高度なノイズ管理が求められます。特に、病院内では多くの電子機器が同時に動作するため、無線通信機器との干渉を防ぐ対策が必要です。そのため、IEC 60601-1-2が適用され、医療機器が適切に動作する環境を維持するための基準が定められています。
産業機器の分野では、工場や発電所などの厳しいノイズ環境下でも安定した動作を維持することが不可欠です。これを保証するために、IEC 61000シリーズの規格が適用されており、電磁ノイズの影響を受けにくい設計が求められています。
通信機器に関しては、無線通信の適合性を確保することが最も重要な課題となります。特に、Wi-Fiや携帯電話、GPSなどの通信機器が互いに干渉せずに適切に動作するよう、FCC Part 15などの規格が適用され、通信環境の安定化が図られています。
EMC試験の流れ
EMC試験は、放射ノイズ、伝導ノイズ、耐ノイズ性能(EMS)などの測定を行い、規格の適合性を確認するプロセスです。試験は認定された試験機関で実施され、基準値を満たさない場合は設計の修正が求められます。試験の結果が適合しない場合、再試験や設計変更が必要となるため、試験前に適切なノイズ対策を施しておくことが重要です。
EMC適合のための対策
EMC適合を確実にするためには、設計段階からノイズ低減対策を施す必要があります。たとえば、PCB設計の最適化が重要です。適切なグラウンドプレーンの適用や、信号ラインの最適配置を行うことで、ノイズを最小限に抑えることができます。
シールド技術の活用も効果的であり、シールドケースやフェライトビーズを使用することで外部ノイズの影響を防ぐことができます。さらに、フィルタリングの導入によって、LCフィルタを適用し、高周波ノイズを低減することで、EMC適合性を向上させることが可能です。
各業界のEMC対策の課題
各業界ではEMC適合に関するさまざまな課題が存在します。自動車業界では、EV(電気自動車)の普及に伴い、高電圧系統から発生するノイズの管理が課題となっています。医療機器業界では、患者の安全性を確保するため、より厳格なEMC基準が適用されています。
今後、IoTやAIの発展に伴い、EMC規格もさらなる進化が求められます。特に、ワイヤレス通信の普及により、電磁波干渉を最小限に抑えるための新たな規格が策定される可能性が高いです。
まとめ
EMC規格は、電子機器の信頼性を確保し、市場投入を成功させるために不可欠な要素です。各業界ごとに異なる要求事項を理解し、適切な試験と対策を講じることで、製品の競争力を高めることができます。今後も技術の進化に伴い、EMC規格の要件は変化し続けるため、常に最新の動向を把握し、適切な設計を行うことが重要です。